マルコム・グラッドウェル著 「第1感」 -- 意識より先に感じてた?

マルコム・グラッドウェル著 「第1感」のご紹介。

必勝法則に気がつくまでにどれくらいのプレーが必要?

ここに4組のカードがあります。赤いカードが2組に、同じく青いカードが2組です。そのすべてのカードには、1枚ごとに「△ドルの勝ち」あるいは「×ドルの負け」と記されています。

この赤青の4組のカードでゲームをしてみましょう。

4組のカード

ゲームのやり方は簡単です。4つの山のいずれかからカードを1枚ずつめくっていき、最後の合計金額がプラスならば勝ち、マイナスになってしまったら負けというルールです。

本当は必勝の法則があるのですが、プレイヤーには知らされていません。

赤組のカードには大勝ちもあるけど、逆に大損するカードもあります。だから赤を引くとリスクが大きくなります。

一方、青組には大勝ちのカードは少ないのですが、それ以上に損失が小さなカードが多く含まれています。従って、赤組を捨て青組のカードだけを引いていけば確実に儲かるようになっています。

さて、プレーをしていく中で、あなたはいつ頃この必勝法則に気づくと思いますか?

実験によると、たいていの人はカードを50枚ほどめくったところで、なんとなく必勝法則に気づいたそうです。「青を引けば勝てる」という確信はないけど、なんとなく「青のほうがよさそうだ」と思い始めるのです。

さらに続けて、80枚ほどめくった辺りで必勝法に確信を持ち、なぜ赤いカードを避けたほうがいいのかも正確に説明できるようになるそうです。

“意識” するずっと前に “感じ” てた?

これは、経験の積み重ねで仮説を立て、さらに経験を重ねて仮説を検証していくという、きわめて常識的な学習のプロセスです。

面白いのはここから。

研究者らは被験者の手のひらに測定機を取りつけ、汗の出方を調べたのです。

手のひらの汗腺はストレスに反応します。(だから緊張すると、手のひらがじわっと汗ばむのです)

さて、結果は?

なんと10枚目くらいで、みんな赤いカードにストレス反応を示し始めたのです。彼らが「なんとなく」赤は危ないと “意識” し始めたのは、それから40枚もめくった後なのに、です。

それだけではありません。手のひらが汗ばんできたのとほぼ同時に、参加者の行動パターンも変わり始めました。青いカードをめくる回数が増えて、赤をめくる回数は減りました。

つまり、「なんとなく」ルールが分かったと意識する前から、なんらかの方法で法則に気づき、危険を回避する行動を取り始めていたことになります。

このゲームでは、素早くリスクを判断して次々とカードをめくらなければなりません。しかも一枚めくるたびに新たな情報(どのカードでいくら勝ったか、いくら負けたか)が追加されます。

そういう状況で、人はどのように判断を下すのでしょうか。

初顔の教師の無声ビデオを2秒見ただけで

どうやら私たちの脳は、まったく異なる二つの働き方をするらしいのです。

まずは意識的な働き方。経験に学び、情報をたっぷり蓄積し、整理してから答えを出します。論理的で、確実なやり方です。

ただ、このやり方で結論が出るまでには時間がかかります。先のカードゲームの実験では、カードを80枚もめくる必要があったのです。

一方で、「青いカードをめくる回数が増え、赤をめくる回数が減る」という無意識の内の危険回避行動は、一気に結論に達する脳の働きです。これを「適応性無意識」と呼ぶそうです。

この適応性無意識は強力なコンピュータのようなもので、人が生きていくうえで必要な大量のデータを瞬時に、なんとかして処理してくれます。

初対面の人に会う時、求職者を面接する時、新しい考えに対処する時、切羽詰まった状況でとっさに判断しなければならない時、私たちはこの適応性無意識に(知らずに)頼ります。

たとえば学生の頃、担任の先生が有能かどうかを判断するのに、私たちはどれくらいの時間を費やしたと思いますか。最初の授業で? それとも二回目の授業のあと? 一学期目の終わり?

ある実験によれば、学生たちに教師の授業風景を撮影した音声無しのビデオを10秒間見せただけで、彼らは教師の力量をあっさり見抜いたそうです。

見せるビデオを5秒に縮めても、評価は同でした。わずか2秒のビデオでも、学生たちの判断は驚くほど一貫していたそうです。

さらに、こうした瞬時の判断を一学期終了後の評価と比べてみたところ、本質的な相違はなかったのです。

初顔の教師の無声ビデオを2秒見ただけで下した判断は、その教師の授業を何度も受けた学生の判断と大差なかったのです。これが適応性無意識の力です。

第1感本書の原題は「Blink」ですが、「まばたき」とか「チラ見」って感じでしょうか。

副題には、「『最初の2秒』の『なんとなく』が正しい」とありますが、チラッと見た最初の印象を日本語風に「第1感」と名づけて、それを邦題としたのでしょう。

その「第1感」が本当に正しいことなのかどうなのかを、様々な事実や実験から解き明かしていこうというのが本書のテーマです。

人物や事物の理解においては何ヶ月もかけた観察や研究の結果よりも、ほんの一瞬の判断のほうが正しい場合もあるというのも事実です。

冒頭のカードゲームは、それを実験であぶり出してみようという試みですが、一方でこうした瞬間的な認知が私たちを欺く場合があることも理解しておく必要がありそうです。

この理解を助けてくれる興味深い実験も本書の中で紹介されているのですが、少し長くなりましたので次回に続きます。


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