人生の差は、志の差?

女子マラソンで高橋尚子さんが金メダルをとったのは2000年に開催されたシドニーオリンピックでした。その高橋選手を育てたのが「ほめて育てる」で名高い小出義雄監督です。

高橋選手が初めて小出監督率いる積水化学の門を叩いた日のことを、監督は次のように述懐しています。

「Qちゃん(高橋選手のこと)を入れるのはためらったんですよ。実績もないし、大学を出ていて年を取っていたから」

それでも、入社を許したのは、

「お願いします。私を強くしてください。お給料は要りません」

という健気さに心を動かされたから、だったとのことです。

マラソン大会

高橋選手の前にもう一人、小出監督が育てたオリンピックメダリストがいます。バルセロナ五輪で銀、アトランタ五輪で銅を取った有森裕子選手です。

有森選手は、生まれつきの股関節脱臼だったこともあり怪我が絶えず、さらに幼少期の交通事故の後遺症も重なりで、大した記録も残していないランナーだったんです。

それでも、何度も電話をかけて入門を請う熱意に負け、小出監督は「次期マネジャー候補」としてリクルート社に入社させたのです。

入社後、案の定、毎日チームの一番最後をトコトコと走っていた有森選手でしたが、ある日、小出監督に願い出ます。
 
「監督、私をオリンピックに連れて行ってください。そのためだったらどんな練習にも耐えます。ほかの人が1時間練習するなら、私は2時間がんばれます」

小出監督は、監督人生で得た実感をこのように振り返ります。

「勧誘した子は強くならなかった。一銭もかけなかったのが強くなっている(笑)。要するに、志の差ですよ」

能力の差を越えるのは志

人間に能力の差というものは確かに存在するのでしょう。
  
でも、能力の差だけで勝負が決まってしまうほど人生はつまらないものではないということを、有森選手や高橋選手のエピソードが教えてくれるような気がします。

能力の差を越えるのは志――。

最近、この「志」という字をあまり見ないような気がします。「志」とは国語辞書によれば、ある方向を目ざす気持ち、心に思い決めた目的や目標、心の持ち方、信念といった意味とのこと。

「志」って、「目的」や「目標」と同じような意味合いがあったんですね。あるいはシンプルに「思い」という言葉に置き換えてもいいような気がします。

少し前に、人生における成功のすべてが「思いと行動」という言葉に集約されるんじゃないかということを書きましたが、「志と行動」と書き直そうかな。こっちの方が格好良いかも。

そういえば、“志望校” とか “志望動機” とか、この「志」という文字が入っているなあなんてことに改めて気が付きましたが、「志」で最初にイメージするのは、「少年よ、大志を抱け」でしょうか。

前回、「躾(しつけ)」という漢字に日本語の素晴らしさを感じましたが、この「志」という漢字もいい字ですよね。

この字の上の部分の「士」とは、人が地面の上を2本の脚で歩いている姿を指しているそうです。つまり、「歩いている方向」と「心」が同じであることを表現している漢字なわけです。

その意味では、こうなりたいと “思う” だけではダメで、実現に向けて “行動” して、初めて「志」と呼べるかもしれません。ということは、先の「思いと行動」を一文字で表したのが「志」という字なのかもしれませんね。

あなた方の努力は、すでに報われているのではないですか

大志を抱いて、それに向かって着実に歩みを進めていく日々を送っていくことができたなら、その結果がどうであれ、それだけで幸せな人生のような気がします。

達成の道程

以前に紹介した、アカデミー女優のウーピー・ゴールドバーグの話を再掲したいと思います。彼女は、俳優修業をする若者たちから、次のような質問を受けました。

「私たちは、将来、役者になることを夢見て、毎日毎日、厳しい修行を積んでいます。こうした私たちの努力は、いつか報われるのでしょうか?」

この質問に対して、ゴールドバーグは、こんな風に答えました。

「いま、あなた方は、いつか役者になりたいとの夢を持ち、素晴らしい仲間とともに、励ましあい、助け合いながら、毎日その夢を追い求め、目を輝かせて生きているのでしょう。
そうであるならば、あなた方の努力は、すでに報われているのではないですか」

人生における幸せや喜びとは、大志の先にあるものを手に入れることではなく、大志を抱いて、それに向かって歩いていくこと自体にあるのだと思います。

私たちは過去にも未来にも生きることはできません。生きることができるのは、今のこの瞬間だけ。今、大志を抱いている。今、それに向かって歩んでいる。

この “今” にしか幸せは存在しないのではないかな、って。


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