「心のチキンスープ」 -- 一人一人の持っている “いいところ”

ここ2カ月くらい、ずーっと頭の隅に引っ掛かっていた「物語」がありました。

あれー、あの話、どこで見たんだっけかなって、心当たりの本を繰ってみたり、以前に色々とまとめていたメモ書きを探したりしても見つかりませんでした。

で、先日、奥さんから「アラン・コーエン」のセミナーに申し込んだから一緒に行こうと誘われ、四谷まで出かけて行きました。

会場に着いて、そう言えばこのアラン・コーエンさんって誰?って思い、検索してみたらハワイ在住のベストセラー作家らしい。

著作を見てもどれも知りませんでしたが、そこに「ニューヨーク・タイムズのベストセラー・シリーズ『こころのチキン・スープ』の寄稿作家でもある」との記述が。

ここでピンときました。「あー、分かった」って。あの探していた “話” は、『こころのチキン・スープ』で読んだやつだったんだと。

チキンスープ本棚の奥の方からやっと引っ張り出してきました。奥付の発行日から考えると、読んだのは多分20年くらい前のこと。

短い話を色んなテーマに沿ってまとめる形で、シリーズ本としてかなりたくさんの種類があったと思います。

アメリカには風邪を治すといわれている伝統的な食べ物があって、それが題名の由来になっているチキンスープ。

チキンスープは、(本当に)炎症を抑える効果や体の抵抗力を上げる力があるそうです。

傷んでいる魂や悩んでいる心の炎症を抑えたり、抵抗力を上げてくれる本なわけです。

ずーっと探していたのは、アメリカの小中学校で数学を教えていた女性教師とその生徒のお話。

一人一人の友だちについて、その人の持っているいいところを

ある中学校で数学を教えていた教師(私)が、その年のクラスの中にマークという少年がいるのを見つけました。マークは、小学校時代から知っている明るくて、おしゃべり好きで、そして礼儀正しい、とても印象に残る生徒でした。

教室

ある金曜日、マークのクラスで数学を教えていると、教室の雰囲気がいつもと違っているのに気づいた。その週から始まった新しい学習に、生徒たちは手こずり、段々イライラしてきたらしい。

お互いにとげとげしくなっているようなので、私はこのまま授業を続けるのをやめ、ここで一息いれることにした。

そこで、二枚の紙に自分以外のクラスメート全員の名前を書いて、更にその一人一人の友だちについて、その人の持っているいいところを考えて書き込んでいくように言った。

翌日の土曜日、私は一人一人の子どもについて他のクラスメートが書いたことを、別の紙に書き移していった。

月曜日になってそのリストをそれぞれの生徒たちに渡すと、リストを読み始めた子どもたちの顔に笑みが広がっていった。そしてあちこちからこんな声があがった。

「ほんと?・・・こんなこと書いてもらえるなんて信じられないわ」
「ヘェーッ、僕のあんなとこがいいって言ってくれるのか」
「僕って、結構好かれてたんだな-」

まもなく、生徒たちはリストのことを話題にしなくなった。でも、そんなことはどうでもいいことだった。みんなが再び元気になり、心の平静を取り戻せたのだから。

生徒たちは私の元から飛び立っていき、それから何年もの年月が過ぎて行った。

マークから先生のことはよく聞いています

ある日、休暇から戻ると、いつものように空港に迎えに来てくれた両親の態度に何か不自然なものを感じ、そして父がゴホンとせき払いをしてから話し始めた。

「マーク・エクランドの家族から、昨日の夜、電話があったよ」

「本当? ずいぶん久しぷりね。最後に手紙をもらってから、もう何年にもなるわね。マークは元気にしてた?」

父は静かに言った。

「マークはね、ベトナムで戦死したそうだ。葬式は明日だそうだよ・・・・・ご両親がお前にも出席して欲しいって言ってたよ」

それを聞いた瞬間、時間が止まったように感じた。

お墓

翌日の葬儀で初めて見る軍の棺には、あのマークが横たわっていた。じっと目を閉じた彼の顔はとてもハンサムで凛々しかった。その彼に向かって、私は心の中で叫んでいた。

「マーク、先生に何か言ってちょうだい。あなたが話してくれるのを待ってるから。お願い、昔みたいにおしゃべりをしてちょうだい」

教会はマークの友だちでいっばいだった。牧師のお祈りに続き、軍のしきたりに沿って弔いのラッパの音が響き渡った。一人ずつ棺に聖水を振りかけてお別れをした。最後に私の番がやってきた。

そこへ、棺の付添いとして立っていた兵士が近寄って来た。

「失礼ですが、マークの数学の先生ですか?」

私は棺を見つめたままうなずいた。

「マークから先生のことはよく聞いています」とだけ言うと、その兵隊は敬礼をして去っていった。

葬儀が終わると、クラスメートたちは会食のためにチャックの家に向かった。

そこでは、マークの両親が、私を待っていた。

みんなにとってそれだけ大事なものだったんです

「先生にぜひお見せしたいものがあります」と、財布を出しながら父親が話しかけてきた。「マークが死んだ時、身につけていたものです。先生なら、これが何かおわかりになると思います」。

そして財布の中から二つ折りになった紙を、破れないように丁寧に取り出した。

私には、それが何かすぐにわかった。昔、クラスメート全員がマークのいいところを書き、さらに私が書き写したあのリストだった。

何度も何度もマークが手にとって読んだのだろう。破れそうになったところを何か所もテープでつなぎ合わせてあった。

マークの母親は、「先生、ありがとうございます。ご覧のとおり、マークはこれを宝物にしていたんです」と話した。

教え子たちがマークの両親と私のまわりに集まってきた。チャックは、はずかしそうにほは笑み、こう言った。

「先生。僕、例のリストをまだ大事にとっているんですよ。机の一番上の引き出しに入れています」

ジョンの妻もその後をついで言った。「私たちも結婚記念アルバムに入れています」 「私もやっばり持ってますよ、先生」とマリリンが続いた。

やがて、ビッキーがハンドバッグから財布を取り出すと、中からすっかり古びて擦り切れた紙が現われた。それを見せながら、彼女は目を大きく見開きまばたきもしないで言った。

「私も肌身離さず持ち歩いています。あのリストは、みんなにとってそれだけ大事なものだったんです

私はついにこらえきれなくなり、椅子に座り込んで泣き始めた。死んだマークと、そのマークに二度と会うことのない友人たちのために、涙が流れ続けた。


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