ダニエル・ピンク著 「ハイコンセプト」 -- 感性と、そして感情と

ダニエル・ピンク著(大前研一訳) 「ハイコンセプト」のご紹介。

いわゆるビジネス書のジャンルに入る本でしょう。2006年に購入した本で、この手の本は古臭くなるのが早いような気がしますが、本書に関しては今読んでも参考になる点が多いと思います。

発売当初でも、本書が述べている内容が “新しい” という感じはしなかったと記憶しています。2006年以前から、似たようなことは他でも言われていて、でもそれを高いレベルで実現できているかというと、決してそんなことはなくて・・・・・その状態が、今も続いているのではないでしょうか。

ハイコンセプトかつて日本は、「一億総中流社会」なんて言われていた時代がありましたが、いまや低所得層と高所得層という2極化が進んでいるというのは周知の事実。

あまり好きな言葉ではありませんが、いわゆる勝ち組、負け組ということをよく聞くのも、そんなことの表れですよね。

じゃあ、これからの時代、ざっくり言って「勝ち組」の仲間に入るには何が必要なのかってのが、本書の論旨です。

その必要なものというのが、本書の表紙にも書かれている「6つの感性」ということなのですが、具体的には「デザイン」「物語」「全体の調和」「共感」「遊び心」「生きがい」であり、この6つのを「ハイコンセプト」という言葉で括っています。

トースターは、1日の内の23時間45分は飾られているだけ

でも、「感性」ってなに? 分かったような分からないような言葉ですが、「感受性」って言葉に置き換えた方が分かりやすいかも。感受性豊かな人って、どんな人かイメージできますよね。

国語辞書には、「物事を心に深く感じ取る働き。外界からの刺激を受け止める感覚的能力」とあります。理性や理屈といった “頭” ではなく、 “感覚” として理解する能力なんです。

「快感」という言葉がありますが、この心地よい状態を感じ取るのも感性です。

人とのコミュニケーションの中で、どういうモノやコトが相手に “心地よい状態” を与えることが出来るのか、ということを感じ取る力も感性ってことになります。

ビジネスの場面においては、「製品」を通して顧客とのコミュニケーションを取るかもしれません。その「製品」の何が、買ってくれた人に “心地よい状態” を与えるのか。

「6つの感性」の中の一つ「デザイン」という感性軸では、トースターのことが語られています。曰く、

普通の人が、1日にトースターを使う時間はせいぜい15分である。残りの23時間45分の間、トースターは飾られているだけなのだ。
言い換えれば、トースターにとって1日の1%が「実用性」を発揮する時間で、99%は「有意性」を示すための時間である。それなら見た目が美しいほうが良いのではないだろうか。

ここで言う「有意性」とは、その美しさによって所有者に “心地よい状態” を与えること。

キッチン

あなたの人生について話してください

あるいはもっと直接的な場面もあるでしょう。例えば、お医者さん。本書の中では、「物語」という感性軸で、医者としてのスキルが語られています。

ところで、「物語」とはどういう感性軸なのかというと、そのまま言えば「物を語る能力」ということ。もう少し砕いて言うと、「相手を納得させる話ができる能力」ということです。

情報化時代の今、誰にでも瞬時にアクセスすることのできる “事実” に対する価値は益々低くなっていきます。一方で、それらの “事実” を「文脈」に取り入れ、「感情的インパクト」を相手に伝える能力が、今度は逆に重要になってくるのです。

これが、「物を語る能力」です。

アメリカのある大学では、「物語医学」という授業があるそうです。その授業の中で学生たちは、患者の語る物語をより親身になって聞き、それを鋭敏に「読み取る」ことを学びます。

こうして巣立った若い医師たちは、「どこが痛みますか?」といった型にはまった一連の質問を並べて診断するのではなく、「あなたの人生について話してください」と語りかけるのです。

これは、患者と「共感」でき、患者とより良い人間関係を結ぶためのスキルを学ぶ手法なわけですが、この「共感」も「6つの感性」の中の一つです。

「共感」とは、何が人々を動かしているかを理解し、人間関係を築き、他人を思いやる能力。

こうやって「6つの感性」の具体的な中身を見ていくと、なるほど「ビジネス書」ではあるけれど、日常生活の中で隣人と良い関係を築いていく際にも、大切な能力ではないですか。

訴えかけるべきは相手の “感情” -- そのために必要なのが感性

少し前に、マイク・カキハラ著 「ネットワークビジネス 9つの罠」という本を紹介したとき、「最終的な意思の決定は “感情” で行われる」ということを書きました。

どういうことかというと、例えばあなたが何かモノを売ろうとする時、あるいは何らかの勧誘をしようとする時、相手がそれを買うかどうか、勧誘に乗るかどうかを判断する最大の理由は、“あなた” に魅力を感じるかどうかによるということ。

商品の素晴らしさとか、勧誘内容の魅力であるとか、“頭” で判断することも当然あるでしょう。でもそれは、もしかしたら “小さな後押し” に過ぎないのかも知れません。

先の例に出てきたお医者さんも同じでしょう。医師としての技量は、もちろん大きな判断材料になると思いますが、一般的にはその医師の技量を正しく知る機会はあまりないと思います。

患者さんが、「あの先生に診てもらいたい」というのは、やっぱり感性による判断なのではないでしょうか。もしかしたら良く話を聞いてくれるのかもしれませんし、なんとなく信頼を置けるような気がするのかもしれません。

決定的な理由は、“あなた” なんです。“あなた” から買いたい、“あなた” が勧めるなら、“あなた” に診察して欲しい。

相手に何らかの影響を与えたいと思うならば、訴えかけるべきは相手の “感情” なんです。そして、相手の “感情” に訴えかけることができる人とは、感性豊かな人なんです。


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