柴田義春著 「ゆったりクロールで長く、楽に泳ぐ!」

ここで書いた通り、スイミングにおけるここ数年の目標は、「3kmを1時間で楽に美しく泳ぐ」というものです。時速3kmのスピードとは、50mを1分で泳ぐ速さです。

上級者は、泳ぐ速さに対してストロークの速さが1.3倍

ゆったりクロールで長く楽に泳ぐこの目標を達成するための手段として「ゆったりとした泳ぎ」を身につけたいと何冊かの本を読んだりしているのですが、その中の一冊が前回の記事でも少し触れた柴田義春著の「ゆったりクロールで長く、楽に泳ぐ!」という本です。

この本、他の同じような本と、基本の部分ではそれほど大きな違いがあるわけではありません。ただ、著者の柴田さんは東京学芸大学教授であり、専門はスポーツバイオメカニクスということだからでしょうか、いくつかの「数値」が象徴的に使われています。

その「数値」を中心に、ゆったりと美しく、長く、そして楽に泳ぐために大切な、クロールの「基本」を学んでいきたいと思います。

最初の数値は、前回も紹介しましたが、「ストローク(腕のかき)の速さ」に関するものです。

「泳ぐ速さとストロークの速さとの関係を調べたところ、理想的な泳ぎでは、泳ぐ速さに対するストロークの速さが、1.2~1.3倍だった」

これは、自分としてはかなり衝撃的でした。どうしても「泳ぐスピードが速い=ストロークが速い」というイメージを持ってしまっていたので、腕って水の中でこんなにゆっくり動かすんだということに素直に驚きました。

逆に言うと、ストロークをがむしゃらに速くしても疲れるだけで、泳ぐスピードはそれに見合ったものにはならないということです。

そしてこの関係は、私のように50mを1分以上かかってしまう泳ぎであろうと、50mを30秒くらいのスピードで泳ぐ上級者の泳ぎであろうと成り立つんです。

では、初級者のストロークの速さはどれくらいかと言うと、泳ぐ速さの約2倍で水をかいているとのことですが、その通りだと思います。

自分自身の印象としては、2倍以上のスピードで“無駄に”一生懸命かいているのだと思います。

スポーツには、うまくなるための多くの共通点がありますね

ただ、自分なりに解釈すると、ストロークの速さを今の2倍から1.3倍に落としたからと言って、泳ぐスピードが上がるわけではないと思うんです。

疲れる速さはもちろん軽減されるでしょう。上手くいけば泳ぐスピードが“落ちない”くらいまではいくかもしれません。

でも、泳ぐスピードを上げるには、他の部分の技術を向上させる必要がある筈です。ストロークのスピードを落とすことで、ここでの無駄なエネルギーの消費を他の部分に回したり、ゆっくりとしたストロークの中で、より効率的な手の動かし方やストリームラインに意識を向けるといった。

上級者の“ゆったり”とした泳ぎは、手足はゆっくりと動かしているように見えるのに、泳ぐスピードは速いのです。

初級者は、一生懸命手足を動かしているのに、泳ぐスピードは“ゆっくり”です。“ゆっくり”とした動作で“ゆっくり”とした泳ぎでは、決して“ゆったり”とした泳ぎにはなりません。

ゴルフのスイングも同じです。ゆっくりとしたスイングに見えるのに、ボールは強い勢いで、より遠くへと飛んでいくのが上級者やプロのスイングです。

不要なところの力を抜き、必要な一点に力を集中させる。同じような考え方がスイミングにも当てはまるのでしょう。

“けのび”の「2秒」

水泳の基本中の基本と言えば“けのび”ですね。けのびとは、“蹴伸び”と書きますが、文字通りスタートやターンの際、壁を蹴った勢いだけで進むことです。

この時の姿勢(ストリームライン)が非常に重要であり、泳ぎ全体に大きな影響を及ぼします。なぜなら、けのびの姿勢は悪いけれどクロールの姿勢は良い、というスイマーは存在しないからです。

姿勢が悪いとそれだけ余分に水の抵抗を受けているわけですが、それはけのびの時だけではなく、泳いでいる最中でも余分な抵抗を受けているということなのです。

さて、「2秒」という時間は、上級者が動作を開始してから、けのびの姿勢を完成するまで(壁を蹴り出すまで)の時間です。

スタートの際、壁を蹴るために壁に足をつけながら水の中に沈み込んで、けのびの姿勢を作ってからスタートするわけですが、この姿勢を作るまでに2秒という時間が必要なのです。

初級者は同じ動作をする時、「1.3秒」で壁を蹴り出してしまいます。これは、1.3秒でけのびの姿勢を作れるということではなく、未完成の体勢のまま蹴り出してしまっているということです。

不十分な体制でのスタートは、結果的にけのびの最初の部分で大きな水の抵抗を受けることになり、急激に失速してしまうことになるのです。

どれくらいが合格点なのかはよく分かりませんが、少なくとも8~9mくらいはけのびだけで進めるようになるのを取り敢えずの目標としたいと思います。

グライドで「2m」

けのびの際に最も重要なのは、上記の通りその“姿勢”であり、泳ぐために水の抵抗を出来るだけ減らした流線型をイメージした「ストリームライン」を作る必要があります。

このストリームラインをけのびだけでなく、泳いでいる最中も維持することが、楽に美しく泳ぐための最大のキーポイントなのです。

いかに速く楽に泳げるかとは、いかに水の抵抗を減らすかにかかっているからです。

そして、ゆったりクロールの上級者と初級者との決定的な泳ぎの差を生み出しているのは、水中でのグライド姿勢の違いなのです。

グライドとはグライダーの滑空のイメージで、水中を滑るように進むことです。サイクリング中、ペダルを止めて惰性で走る感覚と相通じるものがありそうです。

水泳は、休みなく手で水をかいていればスピードが出せるというものではなく、グライドという「間」を取り、惰性の力を活かすことでスピードが増し、ゆったりとした疲れにくい泳ぎができるのです。

上級者は手の入水後、プルに入る前に伸びのあるグライド動作をしっかり行っています。入水してから手を「グッ」と伸ばし、さらに前の水をとらえる感じです。

初級者は手の入水後、グライドという「間」を取らずにすぐにプルの動作に入ってしまうため、惰力を生かすことができず、返って水の抵抗を受け、結果的に疲れてしまうことになります。

グライドで十分に伸びることができると、より抵抗の小さいストリームラインを得られるだけでなく、水中で水をかく距離も長くなるので、効率のよい大きな泳ぎができるようになるのです。

試しに、泳いでいる最中にストロークを止め、片手を前に伸ばし、もう一方の手は体側に付け後方へ伸ばし、バタ足も止めて惰性で進んでみましょう。

この時、2m程度スーッとまっすぐ進むことができたら、良い姿勢で気持ちよく泳いでいる証明となります。初級者は、手足の動きを止めたとたん、1mも進まずに下半身が沈み込んでしまいます。

あなたが効率的に泳げているかどうかの一つの目安として、この1.3倍、2秒、2mという数値を参考にしてみませんか。

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