村上春樹著 「海辺のカフカ」(Kafka on the Shore)

前回、南箱根の避暑地で北村薫さんを読んでいたという話をしましたが、これまで夏にはランニングをしながら村上春樹さんの「海辺のカフカ」を読むのが、“神聖な儀式”のようになっていました。

読むと書きましたが、実際にはここで書いた通り、Audible で購入したオーディオブックの Kafka on the Shore を“聴く”んですけどね。だからこそ「ランニングしながら」なんです。

何度読んでも(聴いても)面白いです

「海辺のカフカ」って結構長編で、オーディオブックの長さ的には19時間です。その意味では、ある程度まとまった(そして落ち着ける)時間が必要なので、夏休みの間に集中的に聴いていたという事情もあったわけです。

そう言えば、「海辺のカフカ」の季節っていつだったかなー。記憶の断片をつなぎ合わせると、多分夏だったと思いますが、ここでも書いた通り、この本の中で“季節”はあまり大きな意味を持っていないように思います。

何年間も繰り返し聴いているのは、もう単純に面白いからです(英語のオーディオブックなので、日本語以上に聴くたびに新鮮に感じるからってこともありますが)。

海辺のカフカ2村上春樹さんの本は全部読んで(聴いて)いますが、わたし的にはこの「海辺のカフカ」が一番のお気に入りです。

でも、どこが好きなのかなあ? この本も、他の村上さんの本同様、普通の起承転結があるわけではなく、正直「訳が分からないまま終わってしまった感」いっぱいなんですけどね。

いわゆる村上ワールド炸裂って感じですが、それでも、田村カフカ少年の成長物語として見ると、他の本よりは話の主体がしっかりしているように感じられるのも好きな理由の一つかも。

登場人物や“場所”の魅力が統合して全体の魅力になってるのかな

15歳の少年、田村カフカと、知的障害の(ネコと会話が出来る)老人ナカタさんの物語が交互に語られていきます。

田村カフカは、「世界で最もタフな15歳にならなければ」と胸に秘めながら、父親の携帯電話と僅かな現金だけを持って15歳の誕生日の日に家出をします。

夜行バスに乗って香川県高松市に向かった田村カフカは、高松市に宿をとり、そこから近郊にある甲村記念図書館に通い始めて・・・・・そして物語が動いていきます。

先ず、15歳で未知の世界に家出っていうシチュエーションがいいなあ。それも夜行バスで。旅情をかきたてられます(主人公的には「おい、おい」って感じでしょうが)。

そして高松に着くと、その後いろいろと深く関わっていく(住み込みでアルバイトをさせてもらったり)ことになる甲村記念図書館にホテルから通うんですが、この図書館がまたいいんだな。旧家を改造した私立図書館という設定も、そして雰囲気も、もう本当に魅力的なんです。

実際にあったらぜひ訪問してみたい。私もこんな図書館で時を過ごしてみたいって思います。

この図書館で働く美青年の大島さんも魅力的ですし、大島さんとの関わりの中で、田村カフカは成長していくのですが、その二人の関係のあり方もまた魅かれるものがあります。

もしかしたら、「自分一人で生きていくんだ」という決意に魅かれているのかも

物語的には、この大島さんが田村カフカの理解者となり、先生(導く人)的な役割を担っていくのですが、大島さん所有の山小屋でのシーンも大好きです。

この山小屋、山林の麓にあって、ガスも電気も水道もないところなんですが、そこでの文明に邪魔されない生活(というほど長く滞在するわけではありませんが)は、読んでいてワクワクします。

実際には、私なんかが行ったりしたら夜の闇が怖くて一晩も過ごせないと思いますけど。

そんな全ての要素が混ざり合って、なんか心地よい世界観を作り上げているのが私にとっての大きな魅力のように感じます。

田村カフカが、ジムのトレーニングを日課にしているところも、わたし的にはツボにはまっていました。なにしろ、「世界で最もタフな15歳にならなければ」いけないのですから。

更に言うと、お金を節約するために食を細くするような努力もするんですが、いやー、そのストイックさ加減が好きです。

同時並行のもう一つの物語も

もちろん、田村カフカだけではなく、もう一人の主人公ナカタさんとホシノさんのコンビも十分に魅力的です。

ナカタさんは知的障害があって文字を読めないのだけど、ネコと話が出来たり、空から魚を降らせたり(?)することができます。

ホシノさんは、電車に乗れないナカタさんをトラックに乗せて四国まで連れてってあげる気のいい青年です。

この二人の道中記がまた、なんかホンワカしていて読んでいて気持ちがいいんです。

ホシノさんが喫茶店でクラシックに出会ったり、特に本筋とは関係のないような描写が、(最初は)何の目的があるのか分からない旅に、現実感というか、その街のリアリティを感じさせてくれるのに一役買っています。

村上春樹さんの本のあらすじを知ったからといって

まあ、村上春樹さんの本のあらすじや登場人物にどれだけの言葉を費やしたとしても、それで説明できることなんて本当に微々たるものでしかありません。いつもながらの現実世界と現実でないものの境界とが曖昧な村上春樹ワールドは、読んでみて初めて「ふーん」と思えるものでしょう。

その意味では、100人読んだら100通りの、百万人読んだら百万通りの村上春樹ワールドが出来あがるんだと思います。

読む人ごとの解釈や理解がある。それこそが村上春樹さんの一番の魅力なのかもしれません。

因みに「カフカ」って、チェコ語で「カラス」のことだったんですね。Audible のオーディオブックのジャケット(?)に、カラスがいる理由が初めてわかりました。



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