岡本 浩一 著 「上達の法則」

岡本 浩一 著 「上達の法則」のご紹介。

内容は、題名そのまま、シンプルです。

「上達には法則がある。近道ではなく、法則がある。その法則が把握できている人は、努力の効率がよい」

何かモノゴトを習得しようとするならば、どうせなら上級者の域に、出来るだけ早く到達しましょう、そのための法則を教えましょう、ということです。

「ものの見え方」がグンと一段上がる

上達の法則本書で「上達」というのは、普通の生活をしている私たちが、人並みの適正のある技能に、そう無理ではない練習量で、まあまあ一人前のレベルに達しようとする過程のことを指しています。

こんな経験はありませんか? 何かを勉強したり練習したりしていく過程の中で、フッと「越えたな!」って感じること。

ある一線を越えた瞬間から、その先の違う世界が見えてくる、あるいは、目の前がパーって広がるような感覚を持った瞬間です。

本書では上級者の事を、その上達途上で、(あいまいな言い方ですが)「ものの見え方」がグンと一段上がったという実感を持っている人と定義しています。

何かを習得しようとするとき、この「一線」を越えることが最初の大きな目標になるように思います。そして、その域にたどり着いたことのある人は、なにがしかの自信を持っているように感じられます。

資格に関する知識・技能であれ、英会話であれ、あるいは趣味の領域であれ、この「一段ものの見え方が上がった」という経験をした人は、しばらくそれを離れていても、技能が極端に落ちるという心配が少なく、かつ、上達することによってものの見方がトータルに変わるということを経験で知っているようです。

あの有名な「忘却曲線」のお話

さて、上達していくためには練習や学習といった習得努力が必要となりますが、その “頻度” の適正値を探ってみましょう。

学習の後、私たちは学習したことを忘れていきます。そしてこの “忘却” は、あの有名な「忘却曲線」に沿って発生していくのですが、具体的には学習から「24時間後」、「72時間後」、そして「6~7日後」に大きく生じるのだそうです。

「無意味綴り」の学習では、24時間後では7割くらい覚えているものが、ほぼ72時間後に、それが2~3割程度にストンと落ちてしまいます。

この2~3割程度の保持という状態がしばらく続き、その後、1週間後にまた更にストンと落ちてしまいます。

こういう形で忘却が起こっていくので、復習は、それぞれの忘却直前に行うのが効率的であるというのが著者の主張です。

具体的には、学習の翌日、3日後、そして1週間後に復習をすれば、効率的な学習が可能となるので、練習や学習の計画をする場合にも、これを考慮して頻度を考えていきましょう。

一週間に一度では上達しないわけではありませんが、学んだことを忘れた後にまた学ぶことになるので、これでは大きな上達は望めない(時間が非常にかかる)のです。

忘却曲線から考察すれば、週に2度の学習は、週1度の場合と比べると、上達の速度は雲泥の差となります。

技能の習得には宣言型と手続き型の両方の知識が必要

さて、知識は「宣言型知識」と「手続き型知識」の2つに分けることができるそうです。

宣言型知識とは、数学の公式とか、歴史の年号、英単語等のいわゆる私たちが日常感覚で「知識」と呼びなれているもののことです。

「円周率は3.14である」とか「dogは犬である」と、言語で十分に表しえる知識を宣言型知識といいます。

これに対して、知識形態が宣言でなく、文字通り「手続きで表される知識」が手続き型知識というものです。

ビリヤードの玉の突き方を覚えるのは、言語だけでは表せない「手続き」を含んだ知識ですね。例えば、花の香りの記憶、味覚の記憶なども手続き型知識です。

以前、ワインのソムリエとして有名な田崎真也さんの話をラジオで聞いていたら、こんなことを話されていました。

ソムリエとしてワインのことを学習していく上で、重要だったのは味や香を言語で感じること、あるいは言語で表現することである、といった内容でした。

なるほどねー。

技能の習得には宣言型と手続き型の両方の知識が必要となります。

「アイコニックメモリ」から「ワーキングメモリ」、そしてリハーサルをして

私たちがものを見たり聞いたりすると、それはまず「アイコニックメモリ(感覚記憶)」なる領域に入ります。アイコニックメモリとは、見たまま、聞こえたままの「生の記憶」を、ほんの数百ミリ秒だけ貯蔵することのできる記憶なのです。

この記憶領域には、当然のことながら次から次に新しい事象が入ってきますので、その前の記憶内容はすぐに揮発してしまうのです。

すぐに揮発しないためには、それがワーキングメモリ(作動記憶)に移行することが必要となります。

私たちが友人に電話をしようとして、手帳を見て電話番号を押しているとき、その電話番号はワーキングメモリに入っているのです。

ワーキングメモリの記憶は、数秒以内なら覚えていることができますが、電話で話し始めると、次の瞬間には忘れてしまいます。それは、電話で話した内容がワーキングメモリを占領するようになるので、その前の記憶は揮発してしまうからなのです。

そして、ワーキングメモリには「容量」と「時間」の限界があります。

容量限界は7チャンク(チャンクとは、まとまった意味一つ分)から9チャンクで、時間的制限は、だいたい数秒程度だそうです。

それ以上長く維持するためには、記憶が揮発する前に頭の中で繰り返すことが必要で、これを「リハーサル」と呼びます。

電話番号を確かめた場所が電話から遠い場合、記憶を維持するために電話番号を口頭で繰り返しながら歩いたりするのが、このリハーサルにあたります。

長期記憶が “有効に” 用いられることが

そして、その先にあるのが「長期記憶」と呼ばれるものです。

これは、私たちの日常感覚で言うところの「記憶」に該当するものですが、最新の学説では、この長期記憶は必ずワーキングメモリを通して形成されると考えられているそうです。

さて、今説明してきたことを使って、「技能に上達した状態」を表現すると、次のような状態であると言えます。
  1. 技能に必要な宣言型知識と手続き型知識が豊富に長期記憶に蓄えられている
  2. 必要な知識が、必要に応じて長期記憶から検索できること
  3. 検索できた長期記憶が、ワーキングメモリで有効に用いられること
3.で「有効に用いられる」というのは、長期記憶がワーキングメモリに(活用するために)出力された際、多くの知識が少ないチャンク数で表象される必要があるということなのです。

先に書いた通り、ワーキングメモリには、容量の限界があり、それは7~9チャンク程度であるとされていますが、上級者は容量は同じ7チャンクとしても、一つのチャンクに入る記憶事象の量が格段に多くなるのです。

例えば、将棋の上級者は短時間で局面を覚えられますが、これは、意味の単位に従って局面を見るために、一つの局面が7チャンク以下になって認知されるためなのです。

逆に初心者が覚えることができないのは、40枚の駒がランダムに置かれている図形のようにしか見えないためです。

この1チャンクに入る容量が大きくなるのは、それぞれの技能に関するコードが整い、且つ、そのことによって、「意味」を持って処理できる容量が大きくなるからです。

例えば、日本舞踊のビデオを被験者に見てもらい、「意味のある単位の区切りと思うところで、ボタンを押して下さい」というチャンキング課題をやってもらうと、上級者と初級者とでは明らかな違いが見られるそうです。

英語の会話を理解しようとするとき、英語初心者は一つ一つの単語に意識を向けながら会話を理解しようとするので、会話に追いつかなくなってしまいます。

一方、上級者は全体の大きな流れの中で、いくつかの単語の塊を一つのチャンクとして聞き取り、さらには会話の先を予想しながら理解していくのです。

こうやって読み進めて来ると、先の「ものの見え方がグンと一段上がる」とは、一つのチャンクとして捉えられる量が、ある “しきい値” を越えた状態になることのようです。

まあ何にしても、その道で上級者になる(ものの見え方がグンと一段上がる)というのは、人生における得難い体験のように思えます。


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