今井 芳昭 著 「影響力」

今井 芳昭 著 「影響力」のご紹介。

影響力という “力” って、結構でかいですよね。私たちは、世の中のありとあらゆる事象から、様々な影響を受けながら生きているわけですから。

親の影響、先生の影響、友達の影響、本の影響、ネットやTVやコマーシャルの影響・・・・・。フッと目に入ったものや何気なく聞いた会話から影響を受けることもあるでしょう。

影響力「影響力」って、何でしょうか? 言葉で定義すると、何らかの事象によって、受け手の「ものの考え方」、「行動」、そして「感情」に変化が生じた場合、受け手は与え手から「影響を受けた」ことになります。

考え方や行動や感情に(良くも悪くも)変化を引き起こすわけですから、これはやっぱり注目に値する力ですよね。

わたし自身も以前から興味があり、「影響力の武器」という名著も持っているのですが、ぶ厚い本なので、まだ手つかずに本棚の肥やしになっています。

そんなこともあり、新書版で読みやすそうな本書からアプローチしてみることにしました。


集団の中で一人異を唱えるのは勇気がいります

ここに2つのボードがあり、片方には1本の線分が描かれており、これを基準線とします。もう一方のボードには長さの異なる3本の線分A、B、Cが描かれています。

基準線と同じ長さの線分は「B」であり、「A」も「C」も、一目見れば基準線よりも短い、あるいは長いと分かるような線分です。

普通に答えれば、まず間違いなく「B」と答える状況です。

さて、あなたは自分を合む8人の集団の中で、この問いに答えることになるのですが、たまたま座った順番により、あなたは最後から2番目に答えることになりました。

もちろん、答えは「B」であると確信しています。

1番目の人から回答を始めたのですが、なんとその人は「C」と答えたのです。「この人は目が良くないのかな?」と思っていたら、続く2番目の人も「C」と答えます。

あなたは、え? ウソでしょ? と思い、もう一度ボードを見て、答えを確認しますが、どう見ても基準線と同じものは「B」に違いありません。

ところが、3番目も「C」、4番目も「C」、さらには5番目も6番目もみな「C」と答えるではないですか。

さて、あなたの番がきました。あなたは何と答えるでしょうか。

これは、多数派からの集団圧力の影響を調べた実験なのですが、実験参加者の約3分の1が「C」という明らかに間違った回答を述べたそうです。

この実験で、わざと誤答する実験協力者(サクラ)の人数を1入、2入、3人、・・・・・、10人と変えて、同じ実験を行ったところ、実験協力者が4人まで増えると同調率(誤答率) は、それにつれて高まるのですが、それ以降、9人の条件までは変化がなかったそうです。

ところが、10人になると、返って同調率は下がったとのことで、これはこれでどんな心境の変化なのか興味深いところです。

いずれにしても、集団内においては、各メンバーは他のメンバーから「同調への圧力」を多かれ少なかれ受けてしまうわけです。

影響力の基本となる資源は、“賞” と “罰”

さて、私たちは、どのような人から影響を受けやすいのでしょうか。どのようなものを持っている人、あるいは、どのような特徴、特性を持っている人から影響を受けやすいと思いますか。

私たちがある人(与え手)から影響を受けた際に、その人にはどのような影響力があったから私たちに影響を与えることができたのかという観点から、影響力は7つの種類に整理されるそうです。

ここではその内の、「賞影響力」というものについて触れてみましょう。

影響力の基本となる資源は、賞(報酬、私たちが手に入れたいと思うのもの、望ましいもの)と罰(私たちが避けたいと思うもの、望ましくないもの)の2つです。

私たちの脳は賞を獲得し、罰を回避したいというようにプログラミングされているとのことですが、これってジェームス・スキナー著 「成功の9ステップ」の中で触れられている、「快楽と痛みの原則」と同じことを言っているような気がします。

人間は常に「快楽」を得ようとし、「痛み」を避けようとしているので、その結果、私たちは常に「快楽」が得られる行動を選択し、「痛み」を避けるための行動をしているという原則です。

そして、賞影響力とは、ある人の行動を変えたいと考えた場合、その人が手に入れたい、欲しいと思うものを示し、その人の行動の変容と引き換えにその賞を与えると約束することで影響力を生み出す方法です。

お金であったり、昇進であったり、褒め言葉、尊敬、慰めや癒し、生命の保障・・・・・まあ、いろんな “賞” が想定出来ますよね。

目標の達成度合いを毎日エクセルの表に記入するのも賞影響力

私たちがある行動を取った結果、その直後にこれらの賞が生じると、私たちはその賞をもっと手に入れようとして、その行動を繰り返すようになります。

実は、マイブームなども、この賞影響力によって生み出された結果なのです。

マイブームとは、文字通り、自分の流行、今、自分がハマっていることを指しますが、人によっては、有名店のスイーツだったり、EXILEの曲だったり、あるいは早朝のランニングだったりするかもしれません。

ある行動を取った結果、自分にとっての賞(スイーツの程よい甘さと食感だったり、早朝の澄んだ空気と走った後の爽快感とか)が得られ、さらにその賞を得るためにそれらの行動を繰り返し、いつしかマイブームになったのです。

このように、私たちは賞が得られる行動を自然に繰り返し、満足いくまでその賞を得ようとするように脳がプログラムされているのです。

このことを利用すると、私たちが自分の人生に良いことをもたらすであろう何らかの行動(例えば早起きとか)を習慣にしようとするときも、容易に実現できたりするのです。

早起きできた日にはカレンダーに◎を記すといった些細なことでも、人によっては賞として感じることもできるのです。

私が、ランニングと自転車トレーニングの距離を毎日エクセルの表に記入して、目標に向かって着実に前進していると実感するのも、この賞影響力によるものです。

「お返しの原理」は、かなり強力なようです

個人的に面白いなって感じたのは、賞影響力と似ているのですが、「お返しの原理(返報性)」というものです。

「お返しの原理」とは、以前お世話になった人に対して、今度は自分がその人のためになることをしてあげる、といったことです。

この原理はかなり強力に私たちの行動を規定していて、多くの人は、誰かから援助されたり、ものをもらったりすると、その恩を返さなければならないという気持ちになるそうです。

著者は、ある有名なお寺の門前にあるお土産店に入り、その地域で有名な唐辛子を買おうと思っていました。

店主らしき人に、「柚子入りの唐辛子はありますか」と尋ねると、店主はそれには答えずに、店先で蒸していた売り物の茶まんじゅうを一個取って、「どうぞ」と差し出しました。

著者は頭の中で「返報性を仕掛けられた」と思いましたが、「結構です」と断るのも角が立つと思い、会釈をしながらもらい受け、再び、「柚子入りの唐辛子はありますか」と尋ねました。

すると、「普通のものにも柚子は入っているんですよ。柚子の分量を多くした柚子入り唐辛子は値段が高くて売りにくいので、置いてないんです」と店主らしき人が言います。

つまり、著者が欲しいと思っていた商品は、この店にはないということです。

「そうですか、じゃあ他の店に当たってみます」と言うこともできましたが、茶まんじゅうの威力が発揮され、著者はその店で普通の唐辛子を購入したのです。

著者の問いにはすぐに答えずに、まず茶まんじゅうを差し出した店主が一本先取という感じでしょうか。

このように、返報性の威力は大きく、たとえ返報性の原理を知っていたとしても、一度、相手からものをもらったり、好意的なことをしてもらったりしてしまうと、返報性に対抗することはかなり難しくなるようです。

「社会的証明」という影響力、なんか使えそうな気がするんですが

「社会的証明」という影響力も興味深いです。これは、「数多くの人がやっていることだから、それは社会的に正しいことであり、正しいと証明されているに違いない」という判断の元に行動する(影響を受ける)ようなことです。

「値段の高いものは、良いものに違いない」とか、「多くの人が買っているものは、良い商品に違いない」といったことです。最近で言えば、レビューで評価の高いものを購入するのも、この「社会的証明」によるものです。

一方で、社会的に望ましくない「社会的証明」という場合もあるようです。駅前での駐輪、タバコのポイ捨てなどの迷惑行為がなかなか無くならないのは、この一例です。

この社会的証明を使って、積極的に社会に活かすこともできるのです。

皆さんもホテルに泊まった際に、連泊客にタオルの再利用(翌日、新しいタオルを用意せず、もう一日同じタオルを使ってもらう)をお願いするメッセージを見たことがあると思います。

あるホテルで、このメッセージの文面を色々と変えて、その効果を2ヶ月間に渡って測定するという実験が行われました。

いくつかの文面で行われたのですが、シンプルに、「環境保護のために・・・・・」というメッセージの場合、タオルの再利用率は宿泊客の3分の1に過ぎませんでした。

ところが、

「環境を保護するために、ほかのお客様の輪に加わって下さい。調査では、宿泊中にタオルを再利用することによって環境に配慮された○○号室にご滞在のお客様が75%いらっしゃいました。お客様もこの輪に加わることができます」

というメッセージでは、宿泊客の約半分がタオルの再利用をしたそうです。

既に環境保護活動をしている人たちがいて、その人たちの輪に加わって欲しいというコメントを加えると、再利用率は上がり、更に、タオルの再利用を実行している人と宿泊客の類似性(この場合、同室ということ)を強調すると、さらにその数字が上がったのです。

自分と似ている人の行動には、人はいっそう影響を受けやすいようです。



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