Sue London 著 「Trials of Artemis」 (Kindle 版)

Kindle 用デジタルブックで、$1前後の本にはまっていて、100ページ程度の短いものの中にも面白い本はたくさんあるけど、200ページ前後の本がバランス的にはベストかも、という話を書きました

今回、その200ページ前後の本の中から「これは面白かった!」という1冊を紹介しましょう。

真の意味での独身貴族と単刀直入辛口の女の子が主役

SUE LONDONSue London 著 「Trials of Artemis」。

価格は$1.07で、約200ページと長さ的にもベストな分量。

主人公は、 Gideon と Jacqueline の二人で、小説の舞台となるのは1815年のロンドン。

ヒロインとなる Jacqueline は、子供の頃に友達3人と「boys club」なるものを結成します(血判状で!)。

それは、男の子の方が剣で戦ったり、乗馬レースができたりと、楽しいことがたくさんできるからという理由で。

そして、自らの名前(呼称)も男の子風にします。Jacqueline は Jack という具合に。

言ってみれば、この時代の女性としてはある意味とても先進的な考え方を持っていたということで、このことがこの小説の大きなポイントになっています。

Jack は、この活発な性格からの男性的なもの言い(単刀直入で辛口)が災いして、社交界へのデビューから既に3年目なのに未だに結婚の申し込みが無く、今年も wallflower の状態です。

一方、ヒーローとなる Gideon は、Earl(伯爵) です。文字通り独身貴族で、奥さんなんて面倒臭いものは欲しくなく、自由をいつまでも謳歌していたいと思っています。

この二人がある貴族の邸宅で開催された ball(舞踏会)で出会う所から物語がスタートします。

“傷もの” になる運命の女の子を救う道は唯一つ

誰からもダンスに誘われない Jack は、暇を持て余してブラブラと本を探しに図書室に入ります。そこに後から Gideon が入って来るのですが、薄暗い中で Jack の後ろ姿を別の女性と勘違いして後ろから抱きつきます。

Gideon は、別の女性とこの図書室で逢引をしようと約束をしていて、その女性と間違えたのです。

そして、そこにたまたま、今度はこの舞踏会の開催者夫妻が入って来て、Gideon と Jack が一緒にいる場面に出会ってしまったのです。

これが、前回紹介したヒストリカルロマンスの必須単語の一つ、ruined (傷もの)の状態です。

この場面で、女性を ruined の状態から救い出す方法は一つしかありません。この二人の男女(Gideon と Jack)が婚約状態にあることを宣言(いや、実際にはまだ皆には言っていないけど、もうすぐ公表する積りだったんだ、って)することです。

ということで、名誉を重んじる紳士として、Gideon はそのように開催者夫妻に説明をし(するしかないので)、翌日、Jack の家に結婚の申し込みに訪れます。

先に書いたとおり、Gideon は結婚なんてしたくないし、また Jack の方もこんな状態での結婚なんてまっぴらごめんなわけです。でも、状況は2人が結婚することでしか解決のしようがなくて・・・・・。

こんなそれぞれの思いがある2人が結婚式を挙げ、そして共に暮らすようになって、様々な場面で互いの意見の激しい衝突を繰り返しながら、互いの愛情を深めていくというのがストーリーラインです。

この後も彼は私の事を何度もイライラさせるだろう、でも

まあ、シチュエーションだけで言ってしまうとそれほど珍しい設定ではありません。色んな変化を加えながら、結構ポピュラーな設定と言ってもいいくらいかもしれません。

その中でこの本が抜きん出ているのは、2人のキャラクター作りの巧さと、互いの理解を深めていく過程の納得感だと思います。奇抜な引っ掛けががあるわけでもなく、自然な流れの中で読者を納得させてくれます。

この納得感って、大事ですよね。この手の設定で有り勝ちなのは、最初は思いっきり反発し合っているのに、何かのきっかけで急激に理解が進んで、互いの愛が深まってみたいなパターンかな。

言ってみれば、この辺りが100ページの小説と200ページの小説の大きな違いかも。100ペーでは、“急な展開” にしていくしかなくなってくるんですよね。

本の中で Jack は Gideon の行動とか思いやりとかに触れて、「私は彼のことが好き」って思う場面が何度もあります。でも同時に、「この後も彼は私の事を何度もイライラさせるだろうし、まだまだ沢山の衝突を繰り返すだろう」って考えているんです。

これで何もかもOK、彼のことが好きだし、これからは二人とも何の問題もなく、一緒に幸せに生きていけるよねって、そんな浅い考えじゃあないんです。

現実的と言えば現実的だし、また当然のことです。だからこそ、この2人の間の溝が、本当に少しずつ少しずつ埋まっていく過程に共感し、そして楽しんでいました。

直ぐにでも2冊目を読みたいのに・・・・・

主人公の二人が、お互いに正直で、前に進んでいこうという気持ちを持ち続けているのが読んでいて気持ちがいいのでしょう。この手の小説に有り勝ちな “誤解” によって話をネジ曲げていくといった手法を使っていないことも、この作者を大好きになった理由の一つです。

最初に触れた「boys club」は、3人の女の子で結成したものなので、当然、この後にシリーズとして展開されるのだと思います。ただ残念ながら、2冊目がこの夏(2013年8月)に予定されているとのことで、少し待つ必要があるようです。

それにしても、今回の「Trials of Artemis」も、次回予定の「Athena's Ordeal」も、Kindle版しかないようなんですが、どういうことなのでしょうかねえ。「Trials of Artemis」が作者 Sue London の処女作で、まだ “お試し期間中” みたいな感じなのかな。

Kindle 版は、誤植が多い?

何度か書いていますが、ロマンス小説の流れなんて基本的にはワンパターン(だから読み易い)なので、話の流れに大きな影響の無い所は読み飛ばしてしまうことが多いのですが、この本の場合、一文を何度か読み返して、その裏にある感情はこんなことかなって楽しんでいたことが何度もありました。

一文を何度か構文も考えながら読み返していると、英語の “勉強” として見えて来るところがありました。自分の気に入った表現をコレクションしていくのが英作文の勉強になるって話をよく聞きますが、「なるほど、こういうことか」って納得した感じがします。

ただ、一つ注意しなければいけないのは、Kindle 版には誤植(?)が結構あるかもって点。読者レビューを読んでいると、構文やスペルが間違ってるって指摘を見ることが珍しくありません。

私自身読んでいて、例えばここは me ではなくて my じゃないのって箇所があったりするんですが、いやいや私に知識が無いだけで、こういう言い方もあるのかもって、真相は分からなかったりします。

まあ、娯楽として読む分には特に問題ないんですけどね。



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