荒川 弘 著 『銀の匙』

年明けに荒川 弘 著 『銀の匙』の第10巻が発売されたので、今年のブックレビューはこのマンガからスタートしましょう。

銀の匙10マンガを読み始めるきっかけはいつも決まっていて、子供の読んでいるのを何かの拍子に手に取ってみたら、それが面白くてハマってしまった、というのが大概のパターン。

『うさぎドロップ』『BLEACH』『Bakuman』も同じ流れ。

でも今回の『銀の匙』は、子供から「これ面白いから、是非読むべし」と、いつもとは違うパターンで読み始めたのですが、正直、最初の頃は「うん? これ、面白いのか?」って。

北海道の大蝦夷農業高校(エゾノー)を舞台とした学園マンガ。進学校として名高い中学出身の八軒勇吾が、激しい学力競争に敗れ、中学の担任に薦められたエゾノーに入学するところから物語は始まります。

『鋼の錬金術師』の作者でもある荒川 弘さんのマンガなので、間違いなく面白いんだろうなとは思っていましたが、ちょっと想像してたのとは違う方向に面白くて。

究極の料理「卵かけご飯」がたまらん!

このマンガの面白さはどこにあるのか? もちろん色んな側面がある訳だけど、個人的には出て来る食べ物が「もの凄く美味しそう!」ってのは外せないなー。

農業とは縁のないサラリーマン家庭に育った八軒が、鶏の卵がウン○と一緒の肛門から産まれてくることを知って衝撃を受けるシーンがあります。

その後、寮の食堂で出された朝食に生卵があって、周りのみんなが普通に食べる中、八軒だけ食べられず、隣の同級生にあげてしまいます。

その日の夜、強風で壊れてしまった温室の修理に駆りだされる生徒達。作業が終わり、空腹の彼らの前に先生が持って来てくれたのは、炊き立てのご飯とタクアンと “生卵”。

頭の中に渦巻くイメージと空腹感との間で葛藤し、最後は死ぬ気(大げさ)で食べてみたら、これが「超!!!うめぇぇぇぇぇ!!」わけです。

料理マンガに出てくる料理って、なかなか自分の舌でイメージできなくて

料理マンガというのはずいぶん昔からあって、鮮烈に記憶に残っている『包丁人味平』なんて、もう40年も前の作品なんですね。この分野で超有名な『美味しんぼ』は、30年前に連載が開始され、いまだに連載中っていうんですから本当に驚き。

最近のだと『食戟のソーマ』が面白い(これも子供が買ってきたのを横取りしてハマった)。

でも、考えてみると、料理マンガの中に出て来る料理を「美味しそうだな」とか「食べたいな」って思った記憶があまり無いんですよね。

もちろん、「食」を題材としたストーリーには面白さを感じるわけですが、そこに登場する料理って、大概が私の想像の範疇を超えているというか、“舌で” イメージ出来ないって感じかな。

でも、この『銀の匙』(料理マンガではないけれど)に登場する料理(というか食材)の味は、容易にイメージできるんです。先の「卵かけご飯」なんて、その最たるもの。

本当に美味いもの食べた時って、笑いしか出ないんだな!

ピザ宅配圏外(?)に居住するほとんどの学生の要望で、ただ一人「ちゃんとしたピザの味を知っている」八軒が、みんんなのためにピザを焼くことになります。

材料は、小麦粉も肉も野菜もチーズも、すべてエゾノー産。野菜なんてとれたて。これを校内にあった石窯で焼いていくのですから、美味くないわけがありません。

焼き上がったピザを前に不安そうな面々。毒見で先ず一口食べてみた八軒の口からは、「ふへへへへへへ」とか「ははははははは」って、笑いしか出てきません。

そして一斉に食べ始めたみんなの口からも「うひはははははは」って笑いが。

「本当に美味いもの食べた時って、笑いしか出ないんだな!」

すごく納得。美味しい食べ物って、人を幸せにするんですよね。そして、そこには(自分が育てた)「美味しい物を人に食べてもらう時のわくわく顔」もあるんです。作る側も幸せ。

食べるために育てている豚は、ペットじゃないんだから

一方で重いテーマも出てきます。“食べる” ために牛や豚を育てるという難しいテーマに、こんなに正面から取り組んだマンガや小説に、これまで出会った事がありませんでした。

サラリーマン家庭に育った八軒が、生まれたての子豚の可愛さに名前をつけようとすると、農家育ちの級友たちから「名前つけちゃダメだよ! ペットじゃないんだから!」って言われます。

それでも一匹のブタに “豚丼” って名前をつけますが、肉用として出荷する日が近づく “豚丼” をどうするか、自分なりの答えを見つけられずに悩む八軒。

そんな八軒の悩む姿を見て、農家育ちの級友たちの間にも様々な議論が起こって。

一人の先生は、こんな事を言います。

「価値観が凝り固まっている群れに、八軒のようなある種の異物が混ざる事によって、普段やらないようなディスカッションが起こっている。価値観の違う物が混ざれば群れは進化する」

そして八軒が出した答えは・・・・・。

つき立てのおもちが食べたい

第10巻には年の瀬、そしてお正月のシーンがあります。

家に帰りたくない八軒は、学校の寮に一人残りますが、そこに先生たちがいろんな料理の材料を持って集まって来ます。大晦日のお楽しみ会の始まりです。

校長先生が石臼で挽いた自家製ソバを持ってくると、それを他の先生方が持ってきたエゾノー産の大根おろしや、とろろ、ねぎなどと一緒に食べるんです。

夜中に読んでいたら、もう無性にソバが食べたくなって。マンガを読んでいてこんな風に感じるなんて、初めてのことかもしれません。

そして元日はもちつき大会です。つき立てのおもちを、これまたエゾノー産の小豆あん、きなこ粉、大根おろしなどで食べるのですが、もうたまりません。

最近は、一個づつパックされた切りもちしか食べていませんが、あのつき立てのおもちの美味しさは、何十年経った今でも鮮明に思い出す事ができます。


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